矢沢永吉
日本を代表する
ロックミュージシャンとして知られる。
武道館でのライブ回数は日本のアーティストの中では1位。
やんちゃな熱狂的ファンが多く
誤解されやすいが、
曲のナンバーは洗練されていて
ハイセンスなものが多い。
ファン層はサラリーマンからOL、
若者、主婦までと年齢・職種
を問わず多岐に渡る。
親世代の影響から
矢沢ファン2世も多く、
三毛子はまさにその典型であった。
OLの皆さん、
恋に悩む女性の皆さん
アラサーの皆さん
こんばんは。
三毛です。
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三毛子たちはあれほど激しくやりあった後、
何事もなかったかのように
再び駅へと向かって歩いていた。
ひとつ、先程と異なる事は、
三毛介が三毛子の肩に腕を回していると云う事だった。
彼は外に出るやいなや、
三毛子の肩に腕を回した。
これには流石の三毛子も驚いた。
この人は何を考えているのだろうか。
やり直したいのだろうか。
それとも単純に夕飯を一人で食べることが嫌なだけなのだろうか。
三毛子は堪らず聞いてしまった。
「ヨリ戻してくれるの?」
「いや。そういうつもりはない」
「じゃあなんでご飯食べに行くの!
何で呼び止めたの?」
悔しさから三毛子は感情の昂りを押さえきれず、再び泣き出してしまった。
すると彼は、
� �また泣くの??鬱陶しいなあ」
そう云って三毛子の肩から
腕を外そうとした。
しかし三毛子はその腕を掴むと、
「いやあだ!!」と喚いて、まるでだだっ子のように涙を流し続けた。
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三毛子は貫く事が出来なかった。
三毛介の思わせ振りな態度に、三毛子が先に折れてしまったのだ。
つい先程、
意を決して金輪際逢わないと自ら啖呵を切った筈だったのに・・・
惚れた弱味とはよく云ったもの、
結局三毛介に手の内を晒すだけとなってしまった。
「三毛子は俺から離れられない」
確信を与えたに過ぎなかった。
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二人は三毛介行 きつけの定食屋に入った。
あなたの肩は何を意味するすくめますか?
その間も三毛子はしつこく三毛介に迫った。
半端な三毛介の態度が、
三毛子に期待を与えてしまったため、
簡単には引き下がらなかった。
「2週間でヨリ戻すか考えて」
「1か月でどう?
それがダメならもう二度と逢わないよ?」
三毛子は何度も何度も懇願した。
「いいよそれでも」
完全に足許を見られてしまっていた。
「ほんとにもう逢わないよ?
他の人と結婚しちゃうかも知れないよ?もうこれで最後だよ?それでも戻してくれないの?」
「三毛子・・・お前のことはどうしたって、嫌いにはなれないんだよ。
でもお前との先は決められないし、
分からない。」
「YOUは狡いよね。
そう� ��って曖昧な態度ばかり取る。」
三毛子は精一杯感情を押し殺した。
傍にあったコップの水をぶちまけてやりたいくらい腹が立っていた。
どこまで卑怯なの?
どこまで狡いの?
どこまであたしの事馬鹿にするの?
離れようとすれば追いかけて来るくせに、近づくと離れちゃう。
どうにも煮え切らない態度に
思わず溜め息が漏れた。
?
するとテーブルの上の携帯が鳴りだした。
メールは最近好意にしていた
某大学病院のワイルドな精神科医からだった。
『三毛子、週末ゴルコンどう?
温泉付きで』
「ねえ、YOU・・・
ゴルコンってなに?」
「は?なにお前そんなの行くわけ? だっせえ」
「だからゴルコンってなあに?」
「知らねえ。
ヤリコンのゴルフバージョンだろ??気色わる!!なにそれ?」
「ふうん。」
ありがとう。
・・・そういうことか。
三毛子はそれっきり口を閉ざしてしまった。
そして三毛介を放って
一人黙々とメールを打ち始めた。
二人の定食が運ばれて来ても
三毛子は無言で医者とメールのやり取りを続けた。
「おい、飯が冷めるぞ。」
三毛介が声を掛けた。
「ああ。」
三毛子はそれだけ答えるとまた黙って携帯に向かった。時折メールを打ちながら笑みを浮かべたり、
悩んでいる素振りを見せた。
何やら指折り数え、
日にちを確認しているようだった。
「お前何やってんの」
「ああ、ごめん。食べるわ」< /p>
三毛子は無言でかつ丼を頬張った。
「相変わらず食いっぷりがいいね」
三毛介が声を掛けたが
一切返事をしなかった。
「お前どうやって帰る?
電車?歩き?」
「車」
ほとんどの男性が精子を味わうでしょうか?
「え?誰か迎えに来るの?」
その質問にも三毛子は答えなかった。
夕飯を食べ終わり店を出ると、
三毛子はようやくまともに口を利いた。
「国道沿いでピックアップしてもらうからこのまま歩いていくよ。」
「分かった。
じゃあ俺も途中まで国道沿いを歩くよ」
三毛介もそれ以上三毛子に問いかけることはしなかった。
しばらく二人は無言で歩いていたが
唐突に三毛子が切り出した。
「そういえば・・・・
12月にある矢沢永吉の武道館ライブ、チケット取れてたんだよね、
どうする??YOU行かないよね?誰かにあげようと思うんだけど」
「ちょっと待ってよ?
俺、それ行きたいんだけど。
日にちがいつか分かる?」
「家に帰ってチケット確認してみる。
確か平日の夜だった気がする。」
「分かった。
頼むわ。
俺もそのあたり忘年会と重ならないか
確認してみるわ。」
「そう。分かった。
無理なら早めに云って。
無駄にしたくないから」
そう云うと三毛子は再び口を
閉ざした。
「ところでお前さ、
ゴルフ頻繁にやってるの?」
「・・・。」
「Yとかと行ってんの?」
「ん・・・。」
三毛介は付き合っている時、
三毛子を合コンやゴルフに引きずりこむYの存在を快く思っていなかった。
「まあ、でも俺も
ゴルコンも誘われたし・・
来週コンパあるし。
やっぱりフリーは気が楽でいいよな」
三毛子は思わずほくそ笑んだ。
さ� �き自分があたしに何を
云ったか思い出してみろよ?
しかし、三毛子は眉一つ動かさずに
黙っていた。
三毛介は三毛子を煽ったのだ。
三毛子はこの反応を確かめたかった。
三毛介が尻尾を出すのを待っていた。
嫉妬の感情を抱くと云うことは
まだ三毛子に恋愛感情が残っている事を如実に表していた。
彼は三毛子の関心を惹こうと自ら
墓穴を掘る羽目になった。
三毛子はもう「ヨリを戻したい」
等と騒がなかった。
嫉妬の表情すら浮かべなかった。
無関心を装った。
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男性だって煽ることもある。
他の女の存在を仄めかし、
貴女の関心を惹こうとする。
可愛く嫉妬して みてもいいが、
余裕があるなら無視をしてみることの方が効果的だ。
今までは散々ヤキモチ妬きだったのにも関わらず、急に無関心になる。
私たちは保育所を離れるとき私の子供がかんしゃくを持っている場合はどうすればよい
あれ?おかしいな?
三毛子はかつてこれで、
浮気がバレた経験がある。
急に付き合っていた男がどうでも
良くなってしまう。
男は三毛子に不信感を抱き
職場でよく告白され困る等と
煽ってみせたが、関心がないため
ますます無反応になってしまった。
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「車って云ってたけど迎えにくるやつ場所分かるの?
連絡してみたら?」
三毛介は顔色一つ変えない無反応な
三毛子に対しついに質問を変えた。
彼の頭からは、弟が迎えに来ると云う選択肢は
すっかり消� ��ていたのだ。
「そうだね。
電話するわ。」
三毛子は携帯電話を
取り出し
リダイヤルボタンを押した。
三毛子はここも学習していた。
駆け引きはやり過ぎると失敗する。
「・・・もしもし?リョウ?あたし。
場所を云うから、お迎え頼むわ。
悪いね」
その会話を聞いた途端、
三毛介の表情が緩むのを三毛子は見逃さなかった。
目は口ほどに物を云う。
なんだ、弟じゃねえか・・・
彼の瞳はそう云っていた。
「そういえば、リョウが荷物取りに来てくれるとか云ってたね。
あはは、忘れてたよ。
矢沢永吉、マジで頼むな。」
声にも安堵感が漂っていた。
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三� �子の父は矢沢永吉の
ファンである。
幼い頃から矢沢を聞いて育った三毛子が2世ファンになるのに時間は掛からなかった。
以前三毛介に
職場の上司の前で歌うオヤジ受けするレパートリーが欲しいと相談を受けた。
長淵と矢沢はどうかと勧めると、
彼は「長淵は俺も好きだが、キャラじゃねえ。ここは一発世界の矢沢を覚えよう」と俄かだが矢沢ファンになった。
父にその話をしたところ快くCDを貸してくれた。
そして意外にも三毛介は矢沢永吉に
ハマった。
三毛子もうれしかった。
カラオケに行くたびに彼は熱唱した。
お世辞にも歌は上手いとは言えなかったが、どういうわけか
難しい矢沢の歌は器用に歌いこなした。
「ほう!YOU上手いね!!
矢沢って難しいのに。」
三毛子はお世辞抜きで 褒めた。
きっと音痴が一周回ったところで、
永ちゃんの声と合うのかもしれないな。
彼はますます
ファンになっていった。
武道館ライブに行ってみたい!
と云いだしたので、
ダメ元で年末恒例の武道館ライブに応募してみたところ偶然にも
当選したのだ。
結局ライブ前に別れてしまった為、
父と行こうと思っていた。
しかし、父は三毛介を誘ってみればいいと三毛子の申し出を断った。
皮肉にも、ライブに当選したのは
別れる直前の夏だった。
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三毛子の父が偶然にも矢沢のファンであること、
三毛介も俄かではあるがファンになったこと、
別れる直前に武道館ライブに当選していたこと、
実はすべてが必然の出来事ではないだろうか。
あたしは今でもそんな風に
思うこと� ��ある。
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「じゃあね」
三毛子は国道の分岐点で
三毛介に別れを告げた。
しかし、彼は何も云わず
そのまま三毛子に背を向けると
家の方へとすたすた歩き出した。
三毛子も品川方面に向かって歩き出したが、ふと気になり、立ち止まって後ろを振り返った。
すると三毛介もまた三毛子を振り返っていた。
気のせいか彼の瞳は
今にも泣き出しそうに見えた。
三毛介は何か云い掛けようとしたが、
再び三毛子に背を向けると
そのまま暗がりの中へ消えていった。
2010・11・20 Sat
21:00
to be continued
三毛でした
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